命を考える 二つの『9.11』
-「命」を守り、つなぐ責任を自覚して!-
今年ももうすぐ9月11日が来ます。私は2つの出来事から、9月11日を「命」を考える日にしています。
一つは、2001年にアメリカ合衆国で起きた同時多発テロです。アメリカ合衆国の国内便4機がハイジャックされ、乗客・乗員を道連れにして世界貿易センターならびにアメリカ国防総省本庁舎に衝突するという世界を震撼させた大事件が起こりました。一連のテロ攻撃による死者は2,996人、負傷者は6,000人以上であり、インフラ等への物理的損害による被害額は最低でも100億ドル(およそ10兆円)とされています。世界の人々に衝撃を与えた歴史的な大事件です。
もう一つの『9.11』で失われた命は、たった一つでした。しかし、そのたった一つの命に関わった人たちにとっては、アメリカ合衆国の同時多発テロ以上の衝撃を与え、今もその悲しみから完全に立ち直ることはできていません。その命が奪われたのは、2015年9月11日の夕方でした。自転車に乗って遊んでいた場所から家に帰る途中、小学校3年生だったその少年は車に轢かれてしまい、そのたった一つの命を失ってしまいました。
この痛ましい事故をきっかけにして、深谷市では市内の全小学生に、一人一人のたった一つしかない大切な命を守ってほしいという願いを込めて、ヘルメットを贈り続けています。この命を守る贈り物は、今の中学校3年生が5年生の時から始まりました。
命に軽重はありません。たくさんの命が失われたアメリカ合衆国の同時多発テロに比べ、失われた命の数は 1/2,996 だから、深谷市の事故は大したことがないなんてことは決してありません。どの命も大切で尊いもので、特にその命に関わってきた人たちにとってはかけがえのない大事な大事な一つしかない命なのです。
私たちはみんな一つずつ、そんなかけがえのない大切な命をもらっています。楽しいことも嬉しいことも、命があるから味わえます。けれどもこの命というのは、自分で勉強したり努力したりして手に入れたものではありません。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんといった家族や先祖からつながっている命のリレーがされて、今私たちのところにあります。また、赤ちゃんとして生まれてきたときから、お母さんやお父さんはもちろん、周りのたくさんの方々が大切に守り・育ててくださり、私たちも自分でいろいろと頑張った結果、今の私たちがあります。ですから、私たちは自分のためはもちろんですが、今まで育ててくださった方々のためにも、自分の命を大切に大切にしなければいけません。
ところが、そんな大切な命を粗末にしているのではないかと感じるようなことがあります。自転車を運転しながらスマホをいじっていたり、友達と横に並んで話しながらよそ見運転をしていたり、一時停止をしないで交差点に進入したり・・・。そして、深谷市の子供たちの命を守ってほしいという願いを込めてせっかく贈られたヘルメットをかぶらずに自転車に乗っていたり、かぶっていてもきちんとあごひもで固定していなかったり・・・。たった一つしかない大切な命を、軽く考えすぎていませんか?もしあなたの命が失われたら、あなたに関わってきた人たちがどんなに悲しみ続けるか、考えていないのではないですか?
深谷市の子供たちに贈られたヘルメットに貼られた取扱説明書には、次のように書かれています。
①一度でも大きな衝撃を受けたヘルメットは使用しないこと
②ヘルメットはまっすぐかぶり、あごひもはしっかり締めること
③ヘルメットは改造しないこと
④メーカー指定以外の塗料を用いて塗装をしないこと
⑤ヘルメットの交換目安は、購入日より3年間
⑥頭に合ったサイズのヘルメットを着用すること
⑦メーカー指定以外の部品、付属品を取り付けないこと
⑧ヘルメットは丁寧に扱うこと
⑨50℃以上になる場所に放置しないこと
⑩清掃にガソリン、ベンジン、シンナー、鉱物性油脂類(グリス・ミシン油)等の有機溶剤を使用しないこと
深中生のみなさん、ヘルメットがあなたの大切な命を守れるように扱っていますか?「命」を守り、つなぐ責任を自覚していますか?
保護者の皆様、お子様のヘルメットを時々確認していただき、安全かどうかを見ていただけると幸いです。
あの事故がなければ、深中生として深谷中学校での生活を通して様々な可能性を広げていたであろう仲間の大切な「命」を、見つめ慈しみ愛おしむことから生まれた贈り物を、無駄にしてはいけません。
もうすぐやってくる2020年の『9.11』を、皆さんの命を輝かせて迎えられるように・・・。
最後に自転車の運転についてです。繰り返しになりますが、私たちが最も大切にしなければならないのは『命』です。交通安全に気をつけ、自転車に乗る時のヘルメット着用は、自分の命を守り未来を創るという『将来の自分への責任』を果たすという視点から、何としてもやり抜いてほしいです。
※ 将来の自分への責任・・・将来の自分自身とともに、これまで自分を支えてくれてきた方たちへの責任
今年度も、深谷市内で小・中学生の交通事故が続いています。特に中学生は自転車事故が最も多く、重大事故になっている例もあります。本校生徒も自転車事故にあっています。幸い軽傷でしたが、ほんの少しずれていたら大変なことになっていたと警察の方から注意を受けました。
自転車事故は、頭部に強い衝撃を受けやすいという特徴があります。頭部への強い衝撃は死亡事故につながってしまいます。自転車に乗る時は、必ずヘルメットを着用してください。ご家庭でも是非ご指導よろしくお願いします。